オフィス内の防火対策とは?消防法で定められた義務と準備すべき設備を解説!
オフィスを構えるにあたり、消防法の義務や注意点が分からないとお考えの方も多いのではないでしょうか。
オフィスのレイアウトは、消防法を遵守したものでなければなりません。
そこで本記事ではそんな疑問を払拭すべく、オフィスで順守すべき消防法が定める義務と準備すべき設備について解説します。
この記事をお読みいただき、防火や防災に対する適切な対策にお役立てください。
消防法とは
消防法とは、火災の予防および発生した際の被害を最小限に留めるための法律です。
この法律では、火災の発生や被害拡大を防ぐために、建物の構造や用途、消防設備の設置や点検、管理者の設置や避難訓練の実施などが義務づけられています。
オフィスを構える際には、消防法を正しく遵守し、従業員の命を守るオフィスづくりをしなければなりません。
消防法で設置が義務づけられている設備と対策
従業員の命を守るオフィスづくりをするためには、消防法で定められた義務を正しく理解する必要があります。ここでは、消防法で設置が義務づけられている設備や対策について解説します。
消火設備
消防法では、水や消火剤などで消火を図る消火設備の設置が義務づけられています。
消火設備とは、実際に消火活動をおこなう目的で設置される設備であり、消火器やスプリンクラーなどの総称です。
消火器は人の操作により消火活動をおこなう設備であり、スプリンクラーは火災で発生した熱を感知して自動的に散水する装置のことをいいます。
消火器は人が操作する装置であるため消防訓練が必須となり、スプリンクラーでは定期的な点検が必要になります。
警報設備
消防法では、火災の発生を感知して警報などを発する警報設備の設置が義務づけられています。
警報設備とは、火災発生を速やかに知らせるための設備であり、火災報知器や自動火災報知システム、非常ベルや放送設備、携帯用拡声器や手動式サイレンなどの総称です。
火災報知器とは、火災の初期段階で発生を感知する設備であり、放送設備とは従業員に火災発生を知らせる設備のことを指します。
警報設備は、火災発生時における迅速な避難行動を促すためのものであり、従業員のいるエリアには設置が義務づけられた設備です。
避難設備
消防法では、火災発生時に適切な避難を誘導する避難設備の設置が義務づけられています。
避難設備とは、避難器具および誘導灯・標識のことを指します。
避難器具とは、階段や廊下などの経路で逃げられない場合に使用される設備であり、誘導灯や標識は避難経路を認知させる設備です。
具体的には、避難はしごや避難用タラップ、滑り台や救助袋などが避難器具に該当します。
消防活動用設備
消防法では、消火活動が困難になると予測される地点における消防活動を支援する目的で、消防活動用設備の設置が義務づけられています。
消防活動用設備とは、排煙設備や連結送水管、連結散水設備や非常用コンセント設備、無線通信補助設備などのことを指します。
消防活動用設備は、防火対象物の構造や形態などから、消防活動の困難が予想される高層階や地下階、地下街などにおける消防活動を支援するために設置される設備です。
防火管理者の設置
消防法では、特定防火対象物においては収容人員30人以上の場合、非特定防火対象物においては収容人員50人以上の場合に、防火管理者を設置する必要があると定められています。
防火管理者とは、火災による被害防止に対する安全対策をまとめて、消防計画の立案を中心業務とする消防法で定められた責任者のことです。
防火管理者は、火災の発生やその被害を最小限とする目的で、消防計画の作成と提出、日常の火気管理、避難施設の管理、消防用設備の維持管理、火災に備えた消火訓練や避難訓練などをおこないます。
消防計画の作成
消防法では、一定規模以上の建物において防火管理者を設置し、消防計画を作成・提出することが義務づけられています。
消防計画とは、火災の予防や被害の軽減を目的とし、防火や防災管理の基本方針を定めた計画です。
具体的には、自衛消防活動に関する事項や定期訓練のルール化やマニュアル化などが記載されています。
消防法の視点から見たオフィスにおける注意点
オフィスづくりをおこなう際には、火災リスクを最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。ここでは、消防法の視点から見たオフィスでの注意点について解説します。
パーテーションの設置
床から天井までをパーテーションで区切る際には、個室が増えたとみなされるため、火災報知器・スプリンクラー・非常灯などの設置が必要かつ管轄の消防署への届け出が必要です。
パーティション設置の届け出を怠ると消防法違反となり、行政指導や行政処分(設備設置命令)が下されます。
設備設置命令に従わない場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
火災報知器の設置
火災発生時に即座に警報が鳴るよう、適切な位置に火災報知器を設置することが義務づけられています。
火災報知器は部屋ごとに設置が必要で、パーティションなどで配置されていないエリアがないように工夫しなければなりません。
また、火災報知器の熱や煙を感知する部分は経年劣化もするため、定期的な交換が必要です。
排煙設備の設置
排煙設備とは、火災時の煙を屋外に排出し、消防活動が円滑におこなえるよう支援するための設備です。
排煙設備には、煙が上部に登っていく性質を利用し、天井付近の開口部から煙を外に排出する「自然排煙設備」と、機械で煙をダクトから強制的に屋外へ排出する「機械排煙設備」の2種類があります。
特に、パーティションなどで部屋を区切る際には、正しく作動するよう排煙設備の位置に注意が必要です。
スプリンクラーの設置
消防法では、スプリンクラーは、床面から天井までの高さが10mを超える部分に設置するよう定められています。ただし、可燃物が大量にあり、消火が困難とされる場所では、6mを超える部分への設置が必要です。
スプリンクラーの設置に関しては、天井近くに物を置かないなど、水の散布を妨げないように工夫する必要があります。
内装には不燃素材・準不燃素材・難燃材を使用する
消防法では、火災の燃え広がりを遅らせる目的により、オフィスの壁と天井には不燃素材や準不燃素材、難燃材を採用することを求める内装制限が設けられています。
内装制限とは、不特定多数の人が出入りする建築物において、内装材への延焼が避難経路を妨げることを防止するものであり、 防火・初期消火・人命救助を目的として定められています。
避難経路の確保
避難経路を考える際には、避難通路の幅を確保することや通路に物を置かないこと、避難口を施錠しないことや、避難経路図を作成することに注意しなければなりません。
また、避難通路やオフィスの出入口付近には、転倒しやすい家具などを置かないようにしましょう。
消防署への届け出
オフィスの防火対策に関する届け出には「防火対象使用開始届出書」「防火対象物工事計画届出書」「防火管理者選任届出書」の3種類があります。
「防火対象使用開始届出書」は使用開始の7日前まで「防火対象物工事計画届出書」は工事着手の7日前まで「防火管理者選任届出書」の提出期限はないものの消防計画とともにそれぞれ届け出る必要があります。
消防点検
消防法では、消防用設備などの点検と報告が義務づけられています。
消防点検は、設備の種類や点検内容に応じて、消防庁長官の定める期間ごとにおこないます。
定期的に消防点検をおこなうことで、設備の不具合や劣化を早期に発見し、適切に維持が可能になります。
消防法違反になるオフィスのレイアウト
デザインばかりを重視したレイアウトをおこなうと、意図せず消防法に違反してしまう可能性があります。ここでは、消防法違反になるオフィスのレイアウトについて解説します。
廊下の通路幅が足りない
オフィスの通路幅は消防法で定められており、オフィスでは適切な避難経路の確保が必要です。
具体的には、廊下の片側のみに部屋がある場合は1.2m以上、廊下の両側に部屋がある場合は1.6m以上の通路幅を確保する必要があります。
間仕切りごとに消火設備や排煙設備がない
パーティションなどで間仕切りする場合、エリアごとに消火設備と排煙設備の設置が必要になります。
具体的には、各エリアに火災報知器を設置し、警報が聞こえるようにしなければなりません。
また、排煙設備がなければ有毒な煙も充満しやすく、避難も困難になるため消防法違反となります。
区切られたエリアごとに排煙窓がない
パーティションなどでエリアを区切る場合には、排煙するための窓が必要になります。
排煙窓は、火災時の煙を外に排出することで、建物内の安全を確保するために設置する窓です。
排煙窓がなければ、火災発生時に煙が充満しやすくなり、迅速な避難が妨げられてしまいます。
スプリンクラーの散水を遮る物を設置する
スプリンクラーの散水を遮る物を設置する行為は、消防法違反となります。
スプリンクラーの水が散布される範囲に物を置くと消火効果が低下し、被害が拡大する可能性も高まります。
避難通路を荷物で塞ぐ・狭くする
避難通路を荷物で塞いだり狭くしたりする行為は、消防法違反となります。
避難経路は、火災発生時に遅滞なく避難できるよう確保しておく必要があります。
消防法に違反した場合の罰則
消防法に違反した場合の罰則は違反内容によって異なります。
消防用設備の点検や報告義務に違反した場合、管理責任者に対して30万円以下の罰金または拘留、法人に対して30万円以下の罰金が科されます。
また、消防用設備などの設置や維持命令に違反した場合、設置命令違反では管理責任者に対して1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人に対して3,000万円以下の罰金、維持命令違反では管理責任者に対して30万円以下の罰金または拘留、法人に対して30万円以下の罰金です。
さらに、建築物等に対する措置命令に違反した場合、管理責任者に対して3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人に対して1億円以下の罰金が科されます。
消防法を遵守するオフィスの工夫
オフィスをづくりをする際には、消防法を意識したものにしなければなりません。ここでは、消防法を遵守するオフィスの工夫について解説します。
スプリンクラー・ファン内蔵型のワークブースを設置する
スプリンクラーやファンを内蔵したワークブースを利用することで、パーティションでエリアを区切ったり、消火設備を設置したりする必要がなくなり、快適な空間づくりが可能になります。
欄間付きのパーティションで部屋を区切る
どうしてもエリアを区切りたい場合には、欄間付きパーティションの活用がおすすめです。
欄間が開くタイプのパーティションを採用することで、消防設備の設置が免除される場合もあります。
避難ルートを確保する
オフィス家具や什器などを配置する際には、避難経路を確保することが強く求められます。
大型の家具や什器で避難通路を塞がないよう工夫することは、消防法遵守と従業員の安全確保に欠かせない対策です。
まとめ
この記事では、消防法の概要や設置が義務づけられている設備、消防法から見たオフィスの注意点や消防法違反になるレイアウト、消防法に違反した場合の罰則や消防法を遵守する工夫について解説しました。
消防法で設置が義務づけられている設備には、消火設備や警報設備の設置、避難設備や消防活動用設備の設置、防火管理者の設置や消防計画の作成などがあります。
また、オフィスにおける注意点として、パーティション設置の届け出、区切られたエリアにおける火災報知器や排煙設備の設置、不燃素材の使用や避難経路の確保などが代表的です。
さらに、消防法違反になるケースとして、通路幅が足りなかったり、区切られたエリアごとに消火設備・排煙設備・排煙窓などがないことが挙げられます。
消防法に違反した場合には、懲役や罰金などの罰則が科される可能性があり、常に規定を遵守することが求められます。
防火対策を講じたオフィスづくりは、従業員の安全を確保し、快適で安心できる職場環境を提供するうえで欠かせません。