オフィスの定期借家契約の特徴と活用法を解説!注目が集まる多様なオフィス賃貸借契約

オフィスの定期借家契約の特徴と活用法を解説!注目が集まる多様なオフィス賃貸借契約

「移転先のオフィスの契約は、どのようにを設定したら良いのか?」と悩まれている経営者や総務担当者の方が多いのではないでしょうか。今回は定期借家契約に注目して、一般的な普通借家契約と比較しながら定期借家契約の特徴を解説します。定期借家契約は日本ではまだ一般的な契約ではありませんが、世界では一般的な契約になっています。この記事を最後までお読みになることで、今後の日本でも増えるであろう定期借家契約の基本知識が身に付き、今後の事業計画にとって重要な選択肢を得ることができます。

オフィスの賃貸借契約の種類


普通借家契約」と「定期借家契約」の違いを理解していないと契約後に後悔することがあります。後悔をしないためには、賃貸借契約の基本知識を理解しておくことが前提条件です。二つの契約を対比して理解することで頭が整理され、後悔しない賃貸借契約の第一歩が踏み出せます。

オフィスの賃貸借契約とは?

オフィスの賃貸借契約は、借主(テナント)と貸主(オーナー)との間で結ばれる法的な契約です。主に自動更新型の「普通借家契約」期間満了で契約終了する「定期借家契約」の2種類があります。定期借家契約は、期間満了後に終了する場合と再契約する場合の2つのパターンに分かれます。

賃貸借契約 普通借家契約
定期借家契約 期間満了で終了
期間満了後に再契約
オフィスにおける定期借家契約は、2000年3月1日に施行され20年以上経過しました。定期借家契約は短期的な柔軟性を求める企業に人気が出てきていますが、全体としては普通借家契約の方がまだ主流です。

普通借家契約と定期借家契約の違い

普通借家契約は契約期間終了後も更新可能で長期利用向け、定期借家契約は契約期間が終了すると更新されず、短期利用や柔軟な契約が求められる企業に適しています。

普通借家契約 定期借家契約
契約成立の要件 ・書面もしくは口頭 ・書面のみ(公正証書等)
契約期間 ・制限なし
・1年未満は期間の定めのない契約とみなされる
・制限なし
・1年未満でも自由に期間を設定できる
賃料の増減額請求権 ・原則として、賃料増減額請求権が認められる
・賃料の増減額請求権を排除する特約は無効
・賃料を増額しない特約のみ認められる
・原則として、賃料増減額請求権が認められる
・特約で賃料の増減額請求権を排除できる
契約の更新 ・更新が原則
・正当な理由がない限り貸主は更新を拒否できない
・期間満了により終了する
途中解約権 【期間の定めのない賃貸借契約】
・テナントからの解約申入れはいつでも解約可能
・オーナーからの解約申入れには正当事由が必要
・オーナー、テナントともに自らの都合による解約はできない
再契約 ・可能 ・可能

普通借家契約について


普通借家契約は、日本において最も割合が多い賃貸借契約です。
借主を保護する側面が強い契約形態で、2年間や3年間など一定の契約期間が設定されており、契約期間終了後も自動的に更新されることが多い契約です。長期間にわたり、同じオフィスを利用することを希望する企業に適しています。

契約更新

契約期間終了後に借主からの申し出により、基本的に契約更新が可能です。貸主に正当な理由がない限り、更新が拒否されることはありません。貸主、借主ともに何も意思表示せずに契約満了を迎えた場合は契約更新されます。

借主保護の契約

賃料についてテナント入居者の不利になる契約は無効になります。例えば借主は賃料の減額を貸主に請求できないという内容が契約書に記載されていても無効になります。

借主の途中解約は認められる

契約期間内でも解約予告期間を守れば途中解約が可能です。一般的に、解約の予告期間は契約書で定められ、1〜3ヵ月前に通知が必要です。

普通借家契約のメリットとデメリット

普通借家契約は、長期的に安定したオフィス利用を計画している企業に向いています。例えば、拠点を固定し、継続的な事業運営を行いたい企業や、移転の頻度が低い企業に適しています。

メリット デメリット
貸主 長期的に安定した賃料収入が得られる 正当な理由がないと契約解除が難しい
借主 長期利用が可能で契約更新が保証されやすい 解約には予告期間が必要で柔軟性に欠ける

定期借家契約について


期間満了で終了する賃貸借契約のことです。借主と貸主との合意により賃料や期間が決まり、条件はお互いに柔軟に設定できる点が特徴です。世界では一般的は賃貸借契約ですが、日本では少ない契約形態です。

更新がない

オフィスビルの「取り壊し」や「建て替え」が予定されている場合などに用いる賃貸借契約です。貸主から借主に対して契約期間満了日の6ヵ月〜1年の間に期間満了の通知が行われ、契約期間が満了した後に借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約は可能となります。定期借家契約は更新がないため、契約を継続したい場合は再契約を結ぶことになります。

契約が自由

借主保護の普通借家契約とは異なり、定期借家契約は借主と貸主が対等な立場で契約内容を自由に設定できる契約です。そのため契約期間や賃料などをお互いの合意によって柔軟に決定できます。定期借家契約の場合は、貸主の都合で契約期間が決められているため、普通借家契約に比べると賃料が安く設定されることがあります。

途中解約は認められない

借主は、契約満了までの借りる契約のため、契約期間内の途中解約はできません。ただし、契約条件に途中解約の特約があればその取り決めに従うことになります。中途解約の特約がない契約の場合、残りの期間分の賃料を請求されることがあります。

定期借家契約のメリットとデメリット

貸主にとってメリットの大きい契約に感じますが、自社の事業計画において契約条件が足かせにならなければ、借主にメリットが出てきます。例えば、期間限定でオフィスを借りたい場合や普通借家契約より短い期間で設定できるため有効な選択となります。また、人気のある立地や条件の良いオフィスビルでは、オーナーが物件の長期貸し出しに消極的で、短期間の利用のみを認めている場合があります。そのため、借主は希望のエリアでのオフィス利用を実現するために、定期借家契約を選ぶことがあります。

メリット デメリット
貸主 ・立ち退き料を支払わず居座りのリスクも回避できる
・建て替えや売却する予定の物件でも安心して貸せる
・将来の収益予測が立てやすい
・期間が限定されているため借り手がつきにくい
・賃料が相場より低めになる傾向
借主 ・賃料が安い場合がある
・質の悪いテナント入居者は退去される
・出回っていない希少物件に巡り合える
・借主が再契約に応じない限り退去する
・再契約時に賃料が上昇する可能性がある

定期借家契約はこんな企業に向いている!


定期借家契約の概要は分かったけど「実際にどのように活用したら分からない」という方に向けて、定期借家契約を上手に使った例を紹介します。定期借家契約は、企業のニーズに合わせて契約をカスタマイズできるのが大きな利点です。期間限定の利用やコスト削減、移転のしやすさを得ることができるため、もしご紹介する要望と合致する場合は、定期借家契約を検討してみてください。

一時的なプロジェクトで借りたい

大規模再開発プロジェクトの現場事務所は、プロジェクトが竣工してしまえば、スタッフは現場事務所から退去します。
普通借家契約のように2年で契約期間が設定され、契約期間が満了すると自動更新されるような契約形態だとプロジェクト期間に合いません。その点、定期借家契約の場合は、プロジェクト期間と合わせて3年3ヵ月というように、契約期間の制限がなく借主と貸主の合意があれば自由に設定できるところが魅力です。また、外国企業が日本市場の調査のために、3ヵ月間オフィスを利用したいという場合でも、定期借家契約であれば、3ヵ月という極端に短い契約期間でも借主と貸主の合意があれば設定できます。

事業の拡大や縮小を見越して短期的に借りたい

事業計画によって、従業員数を段階的に増やしたり、減らしたりしたい企業にとって定期借家契約は向いています。そのような企業は短期間での移転が見込まれるため、普通借家契約だと更新や解約の手続きが煩雑になりがちです。一方、定期借家契約であれば契約終了時に自然に契約が終わるため、予定に合わせて移転ができて長期の縛りもなくスムーズです。さらに、定期借家契約は貸主側が空室リスクを減らすために、通常の普通借家契約よりも低い賃料を設定することがあります
スタートアップ企業にとって、収益化が難しい創業時に賃料削減できる定期借家契約は大変魅力的な選択の1つになりました。

自由にリノベーションしたい

取り壊しの予定があるオフィスビルの場合は、借主が自由にリノベーションできる契約交渉がしやすくなります。通常、オフィスビルはリノベーションに制限をかけたり、原状復帰を義務付けることが多いです。取り壊しが決まっている物件では既存のオフィスビルの価値を維持する必要がないため、リノベーションの制限や原状復帰の義務が緩和される場合があります。これにより、借主は自社の働き方に合った理想的なレイアウトやデザインに改装することができるようになりました。
​また、取り壊し予定の物件では、内装や設備が古くなっている場合が多いので、その改修費用を貸主側に負担してもらい、快適なオフィスを低コストで得るための交渉も可能です。加えて、貸主に移転支援費用を要求することも有利な条件の一つとなります。特に大規模なオフィス移転では、移転コストが大きくなるため、このような支援を事前に契約に盛り込むことで、移転後の負担を軽減できます。

定期借家契約を結ぶまでの2つのポイント


普通借家契約は借主を保護する契約ですが、定期借家契約は借主と貸主は対等の立場での契約になるので、借主に知識がないと都合の悪い契約を結んでしまう可能性があります。そのため、仲介する「不動産会社の選定」と「契約条件の交渉」がポイントになります。契約までのポイントを理解することで、定期借家契約の成功が近づきます。

ポイント①:不動産会社の選定

信頼できる不動産業者に巡り合えれば、借主の条件に合った物件を探すことができ、借主の事業計画に合わせた最適な契約期間を設定できる可能性が高まります。不動産会社を選定する際は、定期借家契約の取扱い実績が多い会社から選ぶようにしましょう。
定期借家契約は、再開発が予定されている地域や取り壊しが決まっている建物でよく使われるため、こうした特殊物件を多く扱う不動産会社は定期借家契約の経験が豊富です。定期借家契約の経験が豊富な不動産会社は以下のようなメリットがあります。

  • 独自のネットワークで非公開物件の情報を取得し提案が可能
  • ビルオーナーとの信頼関係が厚い
  • 短期契約における賃料交渉や、短期間での内装工事・設備投資の相談ができる
  • リノベーションや改修の自由度が高い条件で交渉ができる
  • 退去や原状回復に関する手続きをスムーズに進めるための相談ができる

ポイント②:契約条件の交渉

定期借家契約は借主と貸主が対等の立場での契約を結ぶため、契約条件の交渉は慎重に行うことが重要です。契約期間に発生する事柄やリスクに対応した契約条件を事前に交渉しておくことがとても重要です。特に、以下のような交渉項目が成功のカギとなります。

  • 賃料:定期借家契約は契約期間が限定されているため賃料が安くなる場合が多い
  • 契約期間:借主の事業計画に合わせた最適な契約期間を設定する
  • 原状復帰:取り壊し予定の建物の場合は、原状回復を緩和する条件で交渉できる

まとめ


変化の激しい時代において、経営の柔軟性がとても重要になりました。それに伴って、オフィスの賃貸借契約においても柔軟性のある定期借家契約が徐々に増えてきています。
定期借家契約は普通借家契約に比べて、借主に不利な条件の賃貸契約だと誤解をされている場合がありますが、借主にとって有利に働く場合があるのではないでしょうか。重要なのは「定期借家契約が自社の事業計画に合っているか?」を冷静に判断し、自社にメリットが多いのであれば積極的に活用することをおすすめします。

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