セットアップオフィスとは? 変化の激しい時代におすすめの選択肢
今までのオフィスは全ての従業員が出社することを前提にしており、執務室を確保することに重きが置かれていました。現在は、テレワークやフレックスが導入されたことで、オフィスに求められる機能が多様化しています。その結果、皆さんの会社も新たなオフィス機能の必要性に迫られているのではないでしょうか?しかし、その機能を満たすための設計を一から行うには時間と労力がかかるため、すでにその機能が備えられているセットアップオフィスの重要性が高まってきました。
今回の記事は、注目されているセットアップオフィスの実態に迫り、多様な働き方を実現したい経営者や総務担当者の方に向けて有効な情報を提供します。この記事を最後までお読みいただければ、自社に合ったオフィス像が見つけられるはずです。
セットアップオフィスとは?
セットアップオフィスとは、内装工事や什器があらかじめセッティングされたオフィスのことを指します。「資産を持っていない・持ちたくない」企業にとって「入居しやすく・退去しやすい」ため、とても好都合のオフィスといえます。通常のオフィスであれば、設計事務所や内装工事店と契約してオフィスのレイアウトや内装工事を自社で行わなくてはいけません。セットアップオフィスの場合は、その必要がなく賃貸契約後にすぐに業務開始ができます。セットアップオフィスのメリットとデメリットから、セットアップオフィスの特性をより深く理解しましょう。
セットアップオフィスのメリット(借主)
移転がスムーズで契約後に素早く業務が開始できる
通常のオフィスは、内装の打合せから工事までの期間が3カ月以上かかりますが、セットアップオフィスの場合は、内装工事が不要なため契約締結から1週間程度で引越しが可能です。
従業員の満足度があがる
最新トレンドの内装やグレードの高い設備が多く、リフレッシュルームやweb会議用個室、ファミレスブースなど設置された物件が多いです。働き方に合った物件に巡り合えば、従業員の満足度が上がることが期待できます。
原状回復費用が少なくて済む
セットアップオフィスの原状回復はキズの補修や清掃が主となるため、原状回復費用が少なくて済みます。しかし、通常のオフィスに比べて、セットアップオフィスの内装や什器はグレードが高いため、補修や修理が高くつく場合があるので注意が必要です。
移転作業に費やす労力が少ない
レイアウトや内装デザインを決める必要がなく、内装工事もほとんど必要ないため、オフィス移転を担当する部署の負担が軽減されます。
資産をもたずにオフィス移転ができる
新たに什器を購入したり、内装工事をする必要がありません。オフィスの什器や内装工事費は資産計上する必要があるが、セットアップオフィスでは賃料に含まれるため経費として計上する必要がなく節税になります。資産を持ちたくない企業、利益率を下げたくない企業にとっては魅力的といえます。
敷金が安い
セットアップオフィスは通常のオフィスに比べて敷金が安く設定される傾向にあります。貸主や借りる面積によって変動するので確認が必要です。
セットアップオフィスのデメリット(借主)
賃料が比較的高い
グレードが高い内装や什器の費用が賃料に転嫁されているため賃料が高いです。そのため、入居が長期間になると割高になる傾向があります。(3~5年以内が目安といえます)
レイアウト変更が難しい
働き方に合わなかった場合にレイアウトの自由が効かず、変更が難しいです。レイアウト変更した場合は、通常よりも原状回復に費用がかかります。
物件が少なく選択肢が限られている
都内の中央区、千代田区、港区、渋谷区、新宿区の主要5区に物件が集まっており、数も限られていいます。(参考:サンフロンティア不動産 )
また、主要な面積は50坪以下が多く、100坪を超える大型物件は少ないです。
セットアップオフィスは自社に適しているか?
メリットもデメリットもあるセットアップオフィスですが、自社に適していなければ賃料が割高にもかかわらず使い心地が悪いという状態になってしまいます。そのようなことにならないように、以下の項目に自社の現状を照らし合わせて、セットアップオフィスを検討してみてください。
セットアップオフィスに向いている企業
移転までの時間がない企業
- スタートアップ企業やITベンチャー企業など、事業を急速に拡大する必要があり、従業員も急増している企業
- 成長のスピードをストップさせないためにも、早急に新たなオフィスに移転したい企業
オフィス移転の初期コストを抑えたい企業
- 什器の購入や内装工事などの初期費用や時間の節約をしたい企業
- サテライトオフィスや大型プロジェクトの仮オフィスとして検討していて、再移転の予定がすでにある企業
- または、レンタルオフィスからの移転のため、什器を持っていない企業
セットアップオフィスを選ぶ上で気をつけたいポイント
セットアップオフィスのデザイン性に目を奪われて、自分たちの働き方に合わないオフィスを選んでしまっては残念です。セットアップオフィスを選ぶ前の準備から、オフィス選びのポイントまで自社の状況に照らし合わせてください。ポイントを抑えることで、オフィス移転後の後悔を減らすことができます。
現状把握
各部署の従業員数や働き方について把握しましょう。「多くの従業員がオフィスにいる時間帯はいつなのか?」「従業員はオフィスで何をしていることが多いのか?」を注意して観察する必要があります。営業担当者が多い企業では、日中は殆ど人がいなかったり、テレワークを推奨する企業では、執務室に空席が多い場合があります。また、各部署の荷物量も把握しておきましょう。長く入居したオフィスは、必要のない資料や備品が溜まっていることが多くあります。移転先のオフィスへ持って行く荷物の量を把握して、無駄のない収納スペースの確保を心掛けることが大切です。
課題抽出
実際に働く従業員しか見えていない不具合や問題点が多くあります。オフィス移転の担当者は、従業員にオフィスの使い心地に関するヒアリングを行います。ヒアリングした内容から課題を見つけてリスト化しましょう。
レイアウト
セットアップオフィスは最初から内装が完成しているため、レイアウト変更が難しいです。各部署の従業員数や出社状況から席の数や、会議室の広さ、収納スペースを確認しましょう。
機能性
ヒアリングした課題を解決する設備は完備されているのかを確認します。合わせて不必要な設備の有無も確認するとよいでしょう。不必要な設備は賃料に反映されています。
賃料
セットアップオフィスは初期費用が安い分、賃料が高くなる傾向にあります。今後の事業計画や初期費用、入居期間を踏まえてトータル金額を算出する必要があります。3年以上の入居期間が想定される場合は慎重に検討を進めていきましょう。
セットアップオフィス以外の選択肢について考える
セットアップオフィスに違和感を感じたら、その他のオフィス形態も一緒に検討することを、おすすめします。
セットアップオフィスは理解できたが、他のオフィス形態と比べて何が良いのかが分からない方に向けて、代表的なオフィス形態を解説させていただきます。他のオフィス形態を比べることで、セットアップオフィスの理解がより深くなります。まず、オフィスの種類別に内装と初期費用について比較してから、それぞれのオフィス形態について解説します。
内装完成度 | 初期費用 | オフィス形態 |
---|---|---|
★★★★ | ★ | セットアップ・居抜き・シェアオフィス |
★★★ | ★★ | ハーフ・セットアップ |
★★ | ★★★ | 一般的なオフィス |
★ | ★★★★ | スケルトン |
一般的なオフィス
最も普及しているオフィス形態です。基本的な内装と設備は仕上がっているため、テナント企業は自社に合ったレイアウトを設定して、自社で購入したオフィス什器を設置することができます。一般的に、床はグレー系のタイルカーペットで天井と壁は白色で仕上がっていることが多く、自社の雰囲気に合ったオフィスにカスタマイズするには限りがあります。空調や照明、電源コンセント、LAN配線、水廻り設備は完備されているため、テナント企業側で特別な工事をする必要がありません。長い入居を前提としている企業は、自社の働き方や従業員の構成によって自由にカスタマイズできるため、一般的なオフィスが適しているでしょう。現在のオフィスで使用している什器をそのまま使用することが可能なので、初期投資は比較的少なくて済みます。
ハーフ セットアップオフィス
内装の完成度としては、セットアップオフィスと一般的なオフィスの間にある存在です。すでに仕上がっている内装と設置された什器をベースにテナント企業でカスタマイズする余地が残っています。セットアップオフィスは、一般的なオフィスに比べて内装のデザイン性が高く需要が高いですが、低いカスタマイズ性のために入居者が限定され、リーシングが難しくなる傾向にあります。その点、ハーフセットアップオフィスはテナント企業の特性に合わせたレイアウトや設備を追加しやすくなっているため、セットアップオフィスのデメリットを補うオフィス形態になっています。
スケルトン
天井、壁、床がむき出しのままで、内装工事をしていない状態のオフィスです。照明や空調、電源設備も設置されていないため、テナントが入居後に自由にカスタマイズできるのが特徴です。オフィスにおいてスケルトン渡しは稀ですが、店舗併用のオフィスには需要があります。インテリアデザインを完全に自社の好みに合わせて設計できるため、企業イメージを外部に発信したい場合や業務内容に合わせたレイアウトを一から作りたい場合は理想的な選択肢です。内装や設備工事の初期費用が高くなり、工事が数カ月を要する場合があることから、選択する企業は限定されますが、自由度の高い空間づくりを求める企業には適しているでしょう。
居抜きオフィス
以前のテナントが使用していた内装や設備、家具がそのまま残されている状態のオフィスです。天井や壁、床の内装だけでなく、照明、空調、デスクや椅子、会議室の設備がそのまま使用できることが多いため、新たに設備を整える手間やコストを大幅に削減できる点が特徴です。大きなメリットは、移転の準備期間や初期費用を抑えつつ、移転後すぐに業務が開始できる点です。急なオフィス移転や事業拡大に柔軟に対応したいスタートアップ企業や、プロジェクトベースでオフィスが必要な企業にとっては理想的な選択肢の1つになりました。
一方、居抜きオフィスには、前のテナントの内装やレイアウトが残っているため、自社のニーズに合わせたカスタマイズが制限されることがあります。また、設備の老朽化や使用状況によっては、追加のメンテナンスが必要になることも考慮する必要があります。居抜きオフィスは、コストと時間を節約しつつ、早急に業務を再開したい企業に適した選択肢ですが、カスタマイズの柔軟性が低い点が注意点です。
シェアオフィス
オープンスペースを複数の企業や個人が共同で使用するオフィスです。フリーアドレスのデスクに加えて会議室やラウンジも共用で使用ができます。
個室や固定席がないため、コストが低く利用者は月額料金や時間単位でレンタルすることができます。オフィス機器やインターネット環境が完備されているのでスタートアップ企業やフリーランスには最適なオフィスといえます。同じようなオフィス形態にあるのが「レンタルオフィス」や「サービスオフィス」があり、この3つのオフィス形態の共有点は、家具やインフラが完備しており、契約後すぐに業務を開始できる点にあります。一方、初期費用が安い分、月々の賃料が割高になることがあります。
種類 | 概要 |
---|---|
シェアオフィス | 共有スペースを複数の企業や個人が共同で使用するオフィス フリーランスやスタートアップ企業向けの柔軟なオフィス形態 |
レンタルオフィス | シンプルな個室と共有の会議室やラウンジを使用できるオフィス 独立した作業環境を確保しつつ、コストを抑えたい少人数の企業向けのオフィス形態 |
サービスオフィス | 高品質の内装と設備に加えて、ビジネス支援も完備したフルサポートオフィス 重要な顧客との商談が多い企業や士業事務所などのフルサポートを求める企業向け |
オフィス形態 | 個室契約 | オフィス機器 | 会議室 | ビジネスサポート | 法人登記 |
---|---|---|---|---|---|
シェアオフィス | なし | 共用 | 簡易的な 共用会議室 |
なし | 不可が多い |
レンタルオフィス | あり (シンプルな内装) |
共用 | 設備が整った 共用会議室 |
なし | 可能 |
サービスオフィス | あり (高級な内装) |
個室に完備 | 高品質な 共用会議室 |
あり (例:秘書サービス、 電話応対、 郵便物管理) |
可能 |
まとめ
ビジネスのスピードが加速し、多様な働き方が定着した現在では、オフィス形態が多様化しました。そのような環境で生まれたセットアップオフィスはスピードを重視する企業、変化を求める企業にとっては最適な選択肢の1つになりました。セットアップオフィス以外にも、スピードと変化を求める企業に合ったオフィス形態が出てきましたし、今後も増えていくでしょう。皆さまの事業計画や働き方に合わせて、多様化しているオフィス形態から最適なオフィスを選択できるように願っております。