小規模オフィスの働きやすいレイアウトとは?オフィス移転で業務効率UP!
この記事は、オフィスのレイアウトや設備について焦点を当て、新たなオフィス選びの成功に導くための手引きです。オフィスの働き方が変化したことで、今のオフィスに対して「無駄なスペースがあるな」「設備が整っていなくて仕事がしづらいな」と思っている経営者や総務担当の方に向けた記事になっています。
今の働き方に合ったオフィスを手にすることで、従業員の業務効率化と社員満足度の向上を行い業績UPに繋げてください。
なぜ小規模オフィスに移転するのか?
オフィス移転先を考える前に他の企業の状況を知ることが大切です。
この章では、他の企業がどのような課題を持っているのかを明らかにして、自社の課題を把握することに役立ててください。自社の課題を明確にすることで、オフィス移転の成功が一歩近づきます。小規模オフィスに移転した代表的な3つの理由は以下となります。
賃料負担を軽減
オフィス面積が減少した企業の理由で最も多かったのは「コスト(賃料)負担軽減のため」です。
事業規模の縮小やリストラの実施により社員数が減少した場合、今までの広さのオフィスを維持することは固定費の比率を高める要因になります。
テレワークやフレックスの定着による出社率の低下
ややオフィス回帰の動きが出でてきましたが、コロナ禍前の平均出社率85.2%に対して、2023年は66.0%に留まっているのが現状でした。(参考:株式会社日本政策投資銀行 ・オフィスビルに対するステークホルダーの意識調査2023 P21)
テレワークやフレックスが定着している企業がある中で、在宅で働く従業員とオフィスで働く従業員がストレスなくコミュニケーションをとるための対応が必要になります。在宅の従業員がオフィスに出社する目的は、他の従業員と共同で行う作業やチームミーティングが比較的多いため、そのための設備が充実していることが重要です。
従業員満足度の向上
小規模オフィスに移転した企業の移転理由で「賃料負担の軽減」「テレワークの定着による出社率低下」についで3番目に多い理由が「従業員満足度の向上」という結果でした。人手不足の状況において優秀な人材を確保することが、経営の安定化を図るうえでとても重要な要素になります。企業が手放したくない優秀な人材の満足度向上のために、フリーアドレス化や少人数会議スペースの増加を行い、社内コミュニケーションの活性化を図ることに注目が集まっています。
このような試みは、オフィス移転により使用面積を増加させた企業や、現状のオフィスに留まりレイアウト変更を行った企業にも共通事項でした。
レイアウトを考える前の準備
どんなオフィスレイアウトにすべきかは、実際に働く従業員にしか分からない部分がどうしてもあります。新しいオフィスに移転したにもかかわらず、従業員から不満の声が続出するようであれば移転の意味がありません。新しいオフィスのレイアウトを考える前に、以下の手順を踏むことで従業員が満足できる理想のオフィス作りに進むことができます。
社員の意見を聞いて課題を洗い出す
まず、従業員が以前と比べて、どのような働き方に変化したのかを把握します。
- 多くの従業員がオフィスにいる時間帯はいつなのか?
- 従業員はオフィスで何をしていることが多いのか?
などを観察しましょう。
観察した後に、従業員からオフィスの使い心地に関するヒアリングをすることで具体的な改善点が出てきます。例えば「来客に対する対応がしづらい」や「オフィスがうるさくて外部とのオンラインミーティングに支障がある」「1人で集中できるスペースがない」などゾーニングを検討する課題が見えます。
どんな働き方を目指すのか?レイアウトの目的を決める
各部門ごとに洗い出した課題から、オフィス移転先でどのような働き方を目指すのか?を決定して言語化しましょう。
- 従業員の新しいアイデアが生まれるオフィスを目指すために、コミュニケーションを促進するスペースを多く取り入れる。
- 従業員が自分の作業に集中できるクリエイティブなオフィスを目指すために、個別ブースとリラックススペースを作る。
など、その目的を念頭に、課題解決の優先順位を決めていく流れが大切です。
レイアウトに必要な情報を整理しておく
各部署ごとの業務内容と従業員数
外出が多い営業部署の人数やテレワークが多い内勤スタッフの人数など、業務内容とあわせて人数を把握しましょう。
各部署ごとの荷物の量
長い間就業したオフィスでは、必要のない資料や備品が溜まっていることが多くあります。移転先のオフィスへ持って行く荷物の量を把握して、無駄のない収納スペースの確保を心掛けることが大切です。
小規模オフィスのゾーニングのポイント
従業員一人当たりに必要なスペースを確保する
「労働安全衛生法 事務所衛生基準規則 第2章 第2条) (参照:中央労働災害防止協会)では、従業員一人当たりに必要な気積(床面積×高さ)は10㎥で、従業員1人当たりに必要な面積は約1.2坪(4㎡)と定められています。実際に300名以下のオフィスで調査したところ、一人当たりのオフィス面積は約10.5㎡でした。(参考:コクヨマーケティング(株))
テレワークが定着している企業では同時刻に出社する従業員が少ないため、出社率も考慮して、従業員一人当たりに必要なスペースを算出する必要があります。
用途ごとに面積を配分する
各部署の人数や業務内容から動線を確保して、スペースを明確にします。一般的に家具の占有率が大きくなると、狭さを感じやすくなると言われているため、快適性を考慮して面積を配分しましょう。一般的なオフィスは主に以下の6つのエリアに区分されます。
執務エリア
従業員が通常業務のため、最も広くスペースを確保することが一般的です。業務内容に応じて、オフィス家具を選択することで無駄のないゾーニングができます。
会議エリア
リアルで数人が集まる会議やオンラインとリアルの参加者が混在した会議など、会議室の使い方が多様化しています。話合いを促進するホワイトボードやリモート会議用の設備、防音の個別ブースなど、いくつもの用途に対応した設備があると便利です。
収納スペース
書類や備品を保管するスペースを疎かにすると、執務エリアまで書類や備品が侵食し、作業効率が落ちます。資料が増えないようにペーパーレス化を進めることが重要です。
受付エリア
企業の顔となる重要な場所です。来訪者の数や種類によって適切なスペースを確保する必要があります。
休憩エリア
食堂・休憩室・ロッカールーム・更衣室などです。重要度が低いエリアに思われますが、このような施設が充実すると、従業員の満足度が向上するため、結果として仕事の生産性が高まります。
機器関連スペース
OA機器やサーバーなどを設置するスペースです。セキュリティ対策と空調管理が重要です。
小規模オフィスのデスクレイアウト3選
小規模オフィスに適している、デスクレイアウトを3つ紹介します。自社の働き方と照らし合わせて参考にしてください。
対向式レイアウト(島型)
複数の向かい合わせたデスクを島型に配置するデスクレイアウトです。同じ島の従業員は、顔を合わせてコミュニケーションがとりやすいため、チームワークの形成に向いています。
一方、向かいの従業員の電話の声や周囲の行動が目に入りやすく、集中した作業には不向きです。PCに向かって集中する業務ではなく、営業職のように同僚と情報交換を頻繁に行う場合や部下の行動をマネジメントするような場合に適しています。また、対向式は向かい合ったテーブル同士の間に電話やパソコンのケーブルを収納しやすいことが大きなメリットです。
小さな規模のオフィスに適しており、スペースを有効活用できるレイアウトと言えるでしょう。
背面式レイアウト
背中合わせでデスクを配置するタイプのオフィスレイアウトです。背中合わせになっており、周囲の視線を気にすることなく個々が業務に集中しやすいというメリットがあります。また、振り返れば向かい合わせになるので、少人数でのコミュニケーションが取りやすく、集中と交流の両立ができる点も大きな特徴です。
ただし、複数の従業員とのコミュニケーションが取りにくいというデメリットがあります。部署を越えて活動する業務には不向きなレイアウトといえます。また、小規模オフィスの場合は、壁沿いにデスクがレイアウトされたシンプルなデザインになるため、オフィスの雰囲気を向上させる効果も期待できるでしょう。
フリーアドレス式レイアウト
固定席を設けず、自由に席を選べるオフィスレイアウトのため、外出が多い営業職や在宅勤務が多い職種におすすめです。個人作業に集中したい場合やチームで業務を行いたい場合にも、業務内容に合わせて席を選べるのがメリットといえるでしょう。部署を越えて交流しやすいため、コミュニケーションの活性化が促進できます。
一方、マネージャーはチームメンバーがどこにいるか分かりにくく、チームの業務進捗を把握しづらいというデメリットがあります。また、自分の固定席がないため、PCや書類などの荷物はデスクに置いて席を離れられないため、自分のロッカーから荷物を出し入れする必要があります。このように業務内容によっては非効率となるケースがあり、フリーアドレスを導入する場合は、従業員に目的を説明して、アンケートや聞き取り調査をしたうえで導入することを、おすすめします。
優秀な人材確保のために、ウェルビーイング対応設備に注目が集まる
ウェルビーイングは、従業員が身体的や精神的、社会的に満足している状態のことを指します。従業員がウェルビーイングな状態の場合、会社に対する満足度やモチベーションが高く、離職率が低下し、定着率が向上するといわれています。ウェルビーイングは不満を改善する活動におさまらず、更なる向上を目指して会社と従業員が持続的に取り組むべき重要な事柄です。人材不足のなか「どうすれば優秀な人材が入社してくれるのか?」または「優秀な人材が退職しないためにはどうすればいいのか?」と多くの経営者は悩んでいます。
この章では、ウェルビーイングに対応した設備として注目が大きい3つの施設を紹介いたします。大企業や一般の企業がウェルビーイングに対応するために、どのようなオフィス施設に注目しているのか把握して、優秀な人材を確保するためのオフィス作りのヒントを持ち帰ってください。
リフレッシュスペース
リフレッシュルームには「円滑なコミュニケーションの場」と「集中できる作業場」を作り出す効果があります。
この二つの場の目的は「賑やかさ」と「静寂」で相反するため、何を目的にするのかを明確にせずに設置すると十分な効果が得られません。そのために、事前に社員にアンケートをとって、どのようなニーズがあるのか把握したうえで、設置する目的を決めてデザインや設置場所、家具、設備などを選定していきましょう。
例えば、部署間のコミュニケーションを促進したい場合は、誰でも入りやすい開けた空間にして、あえてオフィスの中心やメイン導線上に設置することで利用率が上がると言われています。仕事が煮詰まったときに、気持ちを切り替える目的で利用する場合は、リラックスできる空間が良いでしょう。そのため、カウンター席やソファーなど、気分に合わせて選べるように様々なタイプの什器を設置するとよいでしょう。また、グリーンを設置したりアロマやBGMを取り入れたりすることで、よりリラックス効果が期待できます。
何かアイデアを考えたり、集中して作業したりすることが目的の場合は、ある程度閉ざされた空間にするとよいでしょう。合わせて電源やネット環境を整備することで快適に作業することができます。
共用会議室(専有部の会議室を除く)
テレワークが定着し、フリーアドレスを採用している企業では、日常的に同じチームの従業員と顔を合わせることが少なくなり、どうしてもミーティングが増える傾向にあります。共用会議室が充実していれば、突発的なミーティングでも気軽に利用ができて、執務室で行うミーティングよりも話合いの質が上がることが考えられます。
さらに、個別ブースが設置されていれば、プライバシーが確保され、音漏れが少ない構造になっており、集中してオンラインミーティングや電話を行うことができます。顧客や外部パートナーとのコミュニケーションもスムーズになり、営業効率が上がり業績UPに寄与します。
パウダールーム
女性にとってパウダールームは、化粧直しをする場所としてだけでなく、気分転換のための空間としても利用されています。
従業員は、静かな環境でリラックスできる場所があることで、職場でのストレスや緊張感から少し離れ、心を休めることができます。このような理由からも、女性は男性よりもトイレを利用することが多いといえるでしょう。
そのため、パウダールームがトイレの一角にある場合は、他の利用者を気にしながらトイレで化粧直しや、歯磨きをすることになるため、独立した専用のパウダールームがあれば、より快適に使うことができるでしょう。毎日利用する大切な場所だからこそ、使い勝手が悪く不快な空間であれば、ストレスになってしまい、トイレ環境の悪さが原因で人材の流出に繋がってしまうことも十分にあり得ます。
オフィスのトイレやパウダールームの設計を検討する場合は、男性だけで決めるのではなく、女性の意見を十分に考慮して決めていく必要があります。
まとめ
コロナ禍を経て、テレワークやフレックスを推奨している企業や出社に戻す企業など、働き方が多様化した現在において、オフィスのあり方が変化してきました。そして、人手不足が叫ばれている現在では、優秀な人材の定着と新規採用が会社存続の大きな要因になっています。そのような状況において、従業員の生産性や満足度が高まるオフィス環境は経営を左右する重要な要素となりました。今回の記事が皆さまのより良いオフィス環境作りのお役に立てれば幸いです。